29業種のなかでも、解体工事業は制度の経緯が特殊で、もっとも誤解の多い業種です。

「解体工事業登録があるから許可はいらない」「とび・土工の許可で解体もできる」——このあたりの理解を誤ると、無許可営業や経審の点数漏れにつながります。この記事で整理しておきましょう。

まず押さえたい:「許可」と「登録」は別制度

解体工事をするための手続きには、まったく別の2つの制度があります。

建設業許可(解体工事業) 解体工事業登録
根拠法 建設業法 建設リサイクル法
対象となる工事 500万円以上(税込)の解体工事も可 500万円未満の解体工事のみ
登録・許可の単位 営業所の所在地(知事・大臣) 工事を行う都道府県ごと
有効期間 5年 5年

ポイントは2つです。

  1. 500万円以上の解体工事を請け負うには、建設業許可(解体工事業)が必要です。解体工事業登録では足りません
  2. 解体工事業登録は工事をする都道府県ごとに登録が必要です。福岡県で登録していても、鹿児島県で解体工事をするなら鹿児島県での登録が必要になります

なお、建設業許可(解体工事業・土木一式・建築一式)を持っていれば、その都道府県での解体工事業登録は不要です。許可のほうが上位の制度と考えるとわかりやすいでしょう。

軽微な工事の考え方そのものは500万円未満の工事の記事で解説しています。

平成28年に新設された、いちばん新しい業種

解体工事業が建設業許可の業種として独立したのは平成28年(2016年)6月1日です。それ以前、解体工事は「とび・土工・コンクリート工事業」の一部として扱われていました。

この経緯が、実務上のややこしさを生んでいます。

経過措置はすでに終了している

業種新設にあたっては経過措置が2種類設けられていましたが、いずれもすでに終了しています。

  • とび・土工工事業の許可のまま解体工事を営める措置:平成31年5月31日で終了
  • とび・土工の技術者を解体工事業の技術者とみなす措置:令和3年6月30日で終了

現在は、500万円以上の解体工事を請け負うなら、解体工事業の許可が必須です。「昔からとび・土工でやってきた」という理由で解体工事を続けることはできません。まだ切り替えていない事業者さまは、早急な対応が必要です。

とび・土工と解体の線引き

「解体するなら全部が解体工事業」ではありません。国土交通省のガイドラインは、次のように整理しています。

  • 解体工事業:工作物解体工事。建物などを丸ごと解体する工事がこれにあたります
  • 各専門工事:それぞれの専門工事で建設された目的物を、それのみ解体する工事は、その専門工事に該当します。たとえば内装だけを解体するなら内装仕上工事業、電気設備だけを撤去するなら電気工事業です
  • 建築一式・土木一式:総合的な企画・指導・調整のもとに建築物や土木工作物を解体する工事

平成28年6月1日以降、とび・土工・コンクリート工事業の工事内容から解体は切り離されています。「とび・土工の一部だから解体もできる」という整理は現在では通用しません。判断に迷うケースは事前相談をおすすめします。

技術者(営業所技術者)の要件

解体工事業の営業所技術者になれるのは、次のいずれかに該当する方です。

資格ルート

  • 1級・2級土木施工管理技士(2級は種別「土木」に限ります)
  • 1級・2級建築施工管理技士(2級は種別「建築」または「躯体」に限ります)
  • 技術士(建設部門・総合技術監理部門の一部)
  • とび・とび工の技能検定(1級、または2級+実務経験3年など)
  • 解体工事施工技士(解体工事業に特化した資格。この業種の代表的な資格です)
  • 施工管理技士の第一次検定合格者(1級は合格後に解体工事3年、2級は5年の実務経験)

注意したいのが、資格だけでは足りず、追加の要件が課されるケースです。

  • 平成27年度までに合格した施工管理技士(1級・2級土木、1級・2級建築)は、解体工事の実務経験1年以上、または登録解体工事講習の修了が必要です
  • 技術士は合格年度を問わず、当面の間、解体工事の実務経験1年以上または登録解体工事講習の修了が必要です

手元の資格で足りるかは、合格年度まで含めて必ず事前に確認してください。

実務経験ルート

  • 解体工事に関する実務経験10年以上
  • 指定学科(土木工学・建築学など)卒業+実務経験(大卒3年・高卒5年)
  • 他の業種とあわせて12年以上の経験があり、うち解体工事が8年超であること(組み合わせられるのは、とび・土工・コンクリート工事、土木一式工事、建築一式工事のいずれか)

3つ目は解体工事業ならではの特例です。ポイントは解体工事8年超が必須である点で、とび・土工の経験がいくら長くても解体が8年以下では使えません。「解体8年超だが10年には届かない」という方が、他業種の経験を足して12年にできる制度と理解してください。詳しくは営業所技術者の要件をご覧ください。

実務経験の二重計上ができる特例

さらにもうひとつ、解体工事業だけの特例があります。

平成28年5月31日までにとび・土工工事業の許可を受けて請け負った解体工事の実務経験は、とび・土工工事業と解体工事業の双方の実務経験として二重に計算できます。

業種新設前の経験を無駄にしないための措置です。長年解体を手がけてきた事業者さまにとっては、要件クリアの決め手になり得ます。

経審を受けるなら「完成工事高の振り分け」に注意

公共工事を狙う場合、もうひとつ重要な論点があります。

解体工事の売上を、決算変更届の工事経歴書でとび・土工工事業のまま計上し続けているケースが見受けられます。これでは解体工事業の完成工事高が積み上がらず、解体工事業のランクが上がりません。

解体工事業で公共工事を受注したいなら、完成工事高を解体工事業に正しく振り分ける必要があります。詳しくは経審のための決算変更届で解説しています。

そのほか解体業者が押さえておくべき手続き

解体工事業は、建設業許可以外にも関連する手続きが多い業種です。

建設リサイクル法の事前届出

床面積80平方メートル以上の建築物の解体工事などは、着工の7日前までに発注者(自主施工者が施工する場合はその者)が都道府県知事に届け出る必要があります。

産業廃棄物収集運搬業の許可

ここは元請か下請かで結論が逆になるので、特に注意が必要です。

建設工事では、元請業者が廃棄物の排出事業者と位置づけられます。そのため次のように整理されます。

  • 元請が自社で運搬する場合:排出事業者が自ら運搬することになるため、収集運搬業の許可は不要です
  • 下請が運搬する場合:他人の廃棄物を運ぶことになるため、収集運搬業の許可が必要です

下請が運搬する場合でも、請負代金500万円以下の工事なら許可不要という特例がありますが、解体工事はこの特例の対象から除外されています。つまり下請として解体廃棄物を運ぶなら、常に収集運搬業の許可が必要です。ここを見落としたまま運搬すると、無許可営業になりかねません。

石綿(アスベスト)関係の手続き

事前調査は規模を問わずすべての工事で義務です。加えて、次の規模に該当する工事は調査結果の報告も必要になります。

  • 建築物の解体:解体部分の床面積の合計80平方メートル以上
  • 建築物の改修:請負代金100万円以上
  • 工作物の解体・改修:請負代金100万円以上

許可だけ取れば済む業種ではないため、関連手続きをまとめて把握しておくことが実務上のリスク管理になります。

まとめ

  • 500万円以上の解体工事には建設業許可(解体工事業)が必須。登録では足りない
  • 解体工事業登録は工事をする都道府県ごと
  • とび・土工からの経過措置は終了済み
  • 技術者は資格の合格時期によって追加の実務経験・講習が必要な場合がある
  • 平成28年5月31日までのとび・土工での解体経験は二重計上できる
  • 経審を受けるなら完成工事高の振り分けに注意

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行政書士法人アクティスでは、解体工事業の許可取得はもちろん、経審・産廃許可まで含めたご相談に対応しています。「とび・土工のままになっている」「手元の資格で技術者になれるか知りたい」という段階でも、お気軽にご相談ください。福岡・鹿児島の2拠点で九州全域に対応しています。