建設業許可のもうひとつの技術系要件が、営業所ごとに配置する営業所技術者です。令和6年12月施行の法改正で法令上の名称が「専任技術者」から変わりましたが、実務では今も「専技(せんぎ)」と呼ばれています(特定建設業では「特定営業所技術者」と呼ばれ、両者をあわせて「営業所技術者等」といいます。この記事では一般建設業の営業所技術者を中心に解説します)。
経管と並んでつまずきやすい要件で、特に「資格者がいない会社」は実務経験の証明が山場になります。この記事で、なれる人の条件と証明のやり方を整理します。
営業所技術者とは
営業所技術者とは、営業所ごとに専任で配置する、許可業種の技術者のことです。請負契約の締結や履行を技術面から支える役割で、この人がいない営業所では、その業種の営業ができません。
ポイントは「営業所ごと」「業種ごと」に必要なことです。福岡本店と鹿児島支店の2営業所で内装仕上工事業を営むなら、それぞれの営業所に内装仕上工事業の営業所技術者が必要です。
営業所技術者になれる人(一般建設業の3ルート)
次のいずれかにあてはまる方が、営業所技術者になれます。
| ルート | 内容 |
|---|---|
| ① 国家資格 | 許可業種に対応する施工管理技士・建築士・技能検定などの資格を持っている |
| ② 指定学科卒業+実務経験 | 許可業種に対応する指定学科(建築学科・土木科など)を卒業し、大学・高等専門学校卒は3年以上、高校・中等教育学校卒は5年以上の実務経験がある |
| ③ 実務経験10年 | 許可を受けたい業種について10年以上の実務経験がある |
②の学歴ルートは、専修学校の専門課程を卒業した方も対象です(原則5年以上、専門士・高度専門士の称号があれば3年以上)。
なお①の資格ルートは、資格の種類によっては取得後に一定の実務経験が必要です。たとえば第二種電気工事士は免状交付後3年以上、2級技能検定(建築大工・左官・とび等)は合格後3年以上、建築設備士は取得後1年以上の実務経験が求められます。「資格を持っていれば即OK」とは限らない点に注意してください。
技士補の緩和措置
令和5年7月から、施工管理技士の一次検定合格者(技士補)を指定学科卒業者と同等に扱う緩和措置が始まっています。1級一次合格者は大卒と同等(合格後の実務3年)、2級一次合格者は高卒と同等(合格後の実務5年)として扱われます。
ただし条件が3つあります。
- 実務経験は「合格した後」の期間のみが算入されます(合格前の経験は使えません)
- 土木・建築・電気・管・鋼構造物・舗装・造園の指定建設業7業種と、電気通信工事業は対象外です
- 認められる検定の種目は業種ごとに決まっています(たとえば内装仕上工事業・大工工事業は建築施工管理、解体工事業は土木・建築・造園施工管理など)
「資格試験は一次まで受かっている」という方は、実務10年を待たずに要件を満たせる可能性があります。
どの資格がどの業種に対応するかに注意
資格があれば何の業種でも取れるわけではなく、資格ごとに対応する業種が決まっています。たとえば2級建築施工管理技士は選択した種別によって対応業種が変わります。手持ちの資格でどの業種が取れるかは、都道府県の手引きの対応表で確認します。
実務経験10年の証明が山場になる理由
資格者がいない場合の頼みの綱が③の実務経験10年ですが、このルートは10年分の工事実績を書類で証明する必要があります。
- 証明書類:工事請負契約書・注文書・請書・請求書など、工事の種類と時期がわかるもの(福岡県では年1件以上)
- 在籍証明:その期間、証明者の会社に在籍していたことの確認資料(健康保険被保険者証・厚生年金の記録など)
さらに注意したいのは、実務経験の期間は原則として業種ごとに重複カウントできないことです。同じ10年間で2業種の経験があっても、その10年をまるごと両方の業種に使うことはできません。
ただし、次のような緩和ルートや例外があります。
- 大工工事業と内装仕上工事業は、両方あわせて12年以上(うち当該業種が8年超)の経験があれば、その業種の営業所技術者になれます。つまり大工8年1ヶ月+内装仕上8年1ヶ月(計16年2ヶ月)で両業種とも満たせるため、単純に10年×2=20年は必要ありません。同様の関係がとび・土工工事業と解体工事業にもあります
- 平成28年5月31日までにとび・土工工事業の許可を受けて請け負った解体工事の経験は、とび・土工と解体の双方の実務経験として二重に計算できます
なお、すでに1つの業種で要件を満たしている人が別の業種でも要件を満たす場合、同一営業所内であれば1人で複数業種の営業所技術者を兼ねられます。
専任性のルール——「専任」とは何か
営業所技術者は、その営業所に常勤して専らその職務に従事することが求められます。
- 他の営業所との兼務は不可。1人で2つの営業所の技術者にはなれません(他社の営業所で専任を要する者になっている場合も同様です)
- 他社での勤務や、通勤できない遠距離居住は不可。なおテレワークは常勤の働き方として認められていますが、その場合もテレワークを行う場所が営業所から著しく遠距離で通勤不可能なときは専任と認められません
- 経管との兼任は可能。同じ営業所であれば、1人が経管と営業所技術者を兼ねられます。ひとり社長の会社はこのパターンが大半です
- 工事現場の技術者との兼務には制限があります(次項)
工事現場の技術者を兼ねられるか
営業所技術者は営業所に専任するのが原則ですが、令和6年12月施行の改正で新設された建設業法第26条の5により、一定の要件を満たせば工事現場の主任技術者の職務を兼ねられるようになりました(一般建設業の営業所技術者が兼ねられるのは主任技術者の職務までで、監理技術者の職務は特定営業所技術者に限られます)。
主な要件は次のとおりです。
- その営業所で締結した請負契約に係る工事であること
- 請負代金が1億円未満(建築一式工事は2億円未満)であること
- 兼ねる工事現場は1つまで
- 1日の勤務時間内に巡回でき、災害時の移動時間がおおむね2時間以内であること
- 下請契約は3次まで
- 営業所と現場の双方に連絡員を配置し、ICTによる施工体制の確認措置を講じること
- 人員配置計画書を作成し、現場に備え置くこと
なお、専任を要しない工事については、営業所と現場が近接し常時連絡が取れる体制であれば兼務できるという別の取扱いがあります(これらの併用はできません)。
現場側の配置ルール(主任技術者と監理技術者の違い、専任義務の金額基準)は技術者の現場配置の記事で解説しています。
退職・交代のリスクにも備える
営業所技術者が退職して後任がいない状態になると、許可の要件を欠くことになり、許可行政庁は許可を取り消さなければならないとされています(建設業法第29条第1項)。また、営業所技術者が変わったときは2週間以内の届出が必要です。
技術者が1人しかいない会社は、資格取得の支援や採用で「2人目」を育てておくことが、許可を守る保険になります。
まとめ:最短ルートの見極めが重要
営業所技術者の要件は、①資格 ②学歴+実務 ③実務10年 ④技士補+実務のどのルートで満たすのが最短か、の見極めがすべてです。実務経験ルートは証明書類の収集に時間がかかるため、早めの棚卸しが肝心です。
行政書士法人アクティスでは、在籍スタッフの資格・経歴からどのルートで申請できるかを無料相談で診断しています。経営業務の管理責任者の要件とあわせて、お気軽にご相談ください。
