経管・営業所技術者の要件をクリアできても、最後に立ちはだかるのが財産的基礎です。「500万円」という数字だけが独り歩きしがちですが、実際にはどうやって証明するかといつ証明するかが実務のポイントになります。

一般建設業の財産的基礎——3つの証明ルート

一般建設業の許可では、次のいずれかを満たせば要件クリアです。

ルート 内容 主な証明書類
① 自己資本500万円以上 直前の決算で純資産の合計が500万円以上 直前期の決算書(貸借対照表)
② 資金調達能力500万円以上 500万円以上の資金を調達できる 金融機関の預金残高証明書など
③ 5年間の継続営業実績 直前5年間、許可を受けて継続して営業した実績がある 許可の履歴(主に更新時に使うルート)

新規取得では①か②のどちらかで証明するのが通常です。まず直前期の決算書を見て、純資産が500万円以上あれば①でそのまま通ります。足りなければ②の残高証明書ルートに切り替えます。

②の書類は県によって認められる範囲が異なります。福岡県は預金残高証明書のほか融資証明書等も認めていますが、鹿児島県は融資証明書を認めておらず、預金残高証明書が必要です。この点は見落としやすいので注意してください。

なお③は更新や業種追加で使えるルートで、許可切れ後の新規申請や法人成りにともなう申請では使えません(鹿児島県は明確に認めないとしています)。

残高証明書ルートの最重要ポイント——有効期限

②で証明する場合、いちばん多い失敗が残高証明書の日付切れです。しかも基準の取り方が県によって違います。

  • 福岡県:申請日前30日以内の日の残高を証明したもの
  • 鹿児島県:申請日の1ヶ月以内のもので、証明書発行日現在の残高が記載されたもの

いずれにせよ、残高証明書を用意してから約1ヶ月以内に申請まで漕ぎ着けないと取り直しになります。書類が全部揃う目処が立ってから最後に取得するのが鉄則です。「まず残高証明書から用意しよう」と先に取ってしまい、経験証明に手間取っているうちに期限切れ——これが典型的な失敗パターンです。

複数の口座を合算して500万円にする場合は、すべての証明書の基準日を同じ日に揃える必要があります。ここも見落としがちなポイントです。

資金を動かしてよいのはいつからか

残高証明書は特定の日の残高を証明するものなので、その日に500万円あれば要件は満たせます。ただし、審査の途中で資金を動かすのは避けてください。財産的基礎を満たすかどうかの判断は許可を行う時点でなされるもので、鹿児島県では書類の補正などで審査が長引いた場合に直近の残高証明書の再提出を求めることがあると明示しています。

一方、許可が下りた後については、その基準を満たさなくなっても直ちに許可の効力に影響するものではないとされています(建設業許可事務ガイドライン)。

自己資本500万円の「自己資本」とは

①の自己資本とは、貸借対照表の純資産合計を指します。資本金ではありません。

  • 資本金300万円でも、利益剰余金が積み上がって純資産が500万円を超えていればOK
  • 逆に資本金1,000万円でも、赤字が続いて純資産が500万円を切っていればNG

新設法人の場合は決算を1期も迎えていないため、創業時の財務諸表で判断されます。この場合も基準は資本金ではなく純資産なので、設立時点で純資産500万円以上を確保しておくと、残高証明書の手間が省けます(創立費を費用計上した結果、純資産が500万円を下回るケースもあるため注意が必要です)。

注意したいのは、申請日までに増資して基準を満たすという方法が使えるのは特定建設業の資本金要件だけという点です。一般建設業では、あくまで直前期または創業時の財務諸表で判断されます。これから法人を設立して許可も取る予定の方は、設立段階で純資産の額まで含めて設計しておくのがおすすめです。

なお、自己資本が500万円以上あることを決算書で示せる場合、残高証明書は不要です。ただし個人事業主でまだ決算を迎えていない場合は、残高証明書が必要になります。

特定建設業の財産要件は大幅に厳しい

元請として下請に5,000万円以上(建築一式は8,000万円以上)を出す場合に必要な特定建設業では、財産要件が一気に厳しくなります。なおこの金額に、元請が提供する材料などの価格は含みません。

  • 欠損の額が資本金の20%を超えていないこと
  • 流動比率が75%以上であること
  • 資本金が2,000万円以上、かつ自己資本が4,000万円以上であること

しかもこれらは更新のたびに求められるため、決算内容の管理が欠かせません。一般建設業の500万円とは難易度がまったく違います。

まとめ:証明ルートの選択と取得タイミングの設計

財産的基礎は、要件そのものより段取りで差がつく要件です。

  1. まず直前期の決算書で純資産を確認する
  2. 500万円以上なら決算書のみでOK
  3. 足りなければ、他の書類が揃うタイミングに合わせて残高証明書を取得する

行政書士法人アクティスの丸投げプランでは、どの書類をいつ取得すべきかのスケジュールもこちらで管理します。許可申請の流れとあわせてご覧ください。