技能実習生を受け入れている建設会社に使える補助金が、福岡県で公募されています。令和8年度福岡県外国人材受入企業支援補助金です。
寮のエアコン設置や個室改装、現場の安全看板の多言語化などに使え、補助率1/2・上限30万円。建設業も対象です。
ただし建設業者にとっては注意点が3つあります。とくに「実質的な締切」は公表されている日付とかなり違うので、活用を考えるなら早めの判断が必要です。
制度の概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 補助率 | 補助対象経費(税抜)の1/2以内 |
| 上限額 | 30万円(対象経費60万円で満額) |
| 申請できる回数 | 1事業者につき1回のみ |
| 受付期間 | 令和8年5月15日〜11月30日(郵送必着) |
| 事業完了期限 | 令和9年1月15日(支払完了まで含む) |
| 補助金の支払 | 令和9年2月26日まで(精算払) |
| 申請先 | 福岡県中小企業団体中央会(郵送のみ・持参不可) |
財源は国の「物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金」です。予算に達し次第、受付期間内でも締め切られます。
建設業者が注意すべき3つのポイント
① 特定技能は対象外。技能実習生だけが対象です
まずここを確認してください。この補助金の対象は在留資格「技能実習」の外国人だけです。
(特定技能・特定活動など、技能実習以外での在留資格で雇用している外国人は対象外です。)
建設業で外国人を受け入れている会社の多くは、特定技能の「建設」分野で受け入れています。その場合、この補助金は使えません。自社がどの在留資格で受け入れているか、在留カードで確認してから検討してください。
在留資格ごとの違いは建設業で外国人を雇う方法で解説しています。
② 自社施工の工賃は対象外です
建設業者がいちばん誤解しやすいポイントです。寮の改修工事は対象経費に含まれますが、対象になるのは「施工会社に発注して行う」外注工賃です。
- 自社での施工費用は対象外。「自社内部の取引によるもの」も明確に除外されています
- 自社施工の場合、壁材・床材などの原材料費のみが対象になります
「工事は本業だから自社でやれば安く済む」と考えると、補助金は原材料費分しか出ません。外注したほうが補助額が大きくなるという、通常とは逆の判断になります。
③ 実質的な締切は11月30日ではなく10月です
公表されている締切は11月30日ですが、逆算すると間に合いません。
- 申請(郵送必着)
- 交付決定まで1か月程度(発表元も「1月以上を要している申請も散見される」と注意喚起)
- 交付決定後に着工(交付決定前の契約・着工・納品・支払はすべて対象外)
- 工事・納品
- 支払いまで完了させる(「事業完了」は支払完了を含みます)
- 事業完了後30日以内、または令和9年1月15日までに実績報告
11月末に申請すると交付決定が12月末〜1月になり、そこから着工して支払完了まで1月15日に収めるのはほぼ不可能です。遅くとも10月中の申請、工事規模が大きいならさらに前倒しが現実的です。
何に使えるのか
対象経費は物品購入・工事・印刷・原材料・発送・委託の区分に分かれています。建設業で使いやすいものを挙げます。
寮・住環境の整備
- エアコン、鍵付きロッカー(居室に設置してもOK)
- トイレ、冷蔵庫、洗濯機(※これらは共有スペースに設置するものに限る)
- 個室改装工事、シャワーユニット設置工事、インターネット回線工事
- 上記機器の設置工事
現場で使える多言語化
- 業務マニュアルや安全表示看板の翻訳(委託費)
- 実習生獲得に向けたPR動画・採用パンフレットの制作
建設現場の安全標識の多言語化は、この補助金と相性がよい使い方です。
通勤用の自転車・ヘルメット
条件付きで対象になります。ただし次の4点をすべて満たし、書類を提出する必要があります。
- 交通安全指導の実施
- 防犯登録
- 自転車損害賠償責任保険等への加入
- 自転車管理簿の作成
対象にならないもの
見落としやすいものが多いので、計画前に確認してください。
- 家具(ベッド・机など)
- パソコン・タブレットなどの汎用性が高いもの
- 中古品、リース・レンタル
- 翻訳機、ポケットWi-Fi、Wi-Fi設置工事
- 消費税(対象経費は税抜で計算します)
- 振込手数料
- 単なる機器の更新・入替(ただし居住環境の改善が認められるものは対象。和式から洋式トイレへの入替などは可)
申請の要件
次のすべてを満たす必要があります。
- 福岡県内に本社または主たる事業所があり、中小企業基本法上の中小企業者であること
- パートナーシップ構築宣言を行っていること
- 技能実習生を1人以上受け入れていること(または実績報告書提出日までに受け入れる具体的な計画があること)
- その技能実習生の就業場所が福岡県内であること
- 令和9年1月15日までに支出を含めて事業が完了すること
建設業は業種による除外がなく、中小企業者の定義にも明記されています(建設業は資本金3億円以下または従業員300人以下)。
パートナーシップ構築宣言が先に必要です
要件2は意外なボトルネックになります。未宣言の場合、登録から公開まで通常10日程度、申請が集中する時期はさらに数日かかります。
申請書に宣言日を記入する欄があるため、宣言を済ませてからでないと申請できません。まだ宣言していない会社は、ここから着手してください。
そのほかの実務ポイント
- 税込10万円を超える物品を購入する場合、2社以上の相見積書が必要です(型番を同一にして取得)。設置工事とセットで10万円を超える場合も必要になります
- 支払いは原則銀行振込です
- 相互に関連しない複数の事業をまとめて1回で申請できます。1社1回しか申請できないため、複数の寮の工事などはまとめて申請するのが有利です
- 取得価格が税抜50万円以上の財産は、耐用年数の期間中、処分に事前承認が必要です
- 同一の経費について他の助成を受ける場合、併給はできません
- 書類は事業完了年度の終了後5年間保存が必要です
技能実習は2027年4月に育成就労へ移行します
念のため触れておきます。技能実習制度は令和9年4月1日に育成就労制度へ移行します(外国人雇用の記事参照)。
この補助金の一次資料には育成就労への言及はなく、事業完了期限が令和9年1月15日と移行前に設定されています。令和9年度以降に同様の制度が続くかは公表されていません。技能実習生を受け入れている今のうちに使える制度と考えておくのが安全です。
まとめ
- 補助率1/2・上限30万円。建設業も対象
- ただし特定技能は対象外。技能実習生を受け入れている会社に限られます
- 自社施工の工賃は出ません。外注工賃と原材料費が対象
- 実質的な締切は10月。交付決定に1か月、支払完了まで1月15日必着
- パートナーシップ構築宣言を先に済ませる必要があります
制度の詳細と申請書類は、福岡県中小企業団体中央会のページおよび福岡県の公式ページで公開されています。申請内容の照会は発表元の窓口(092-622-8794)へお問い合わせください。
※本記事は令和8年8月時点の公表資料にもとづいています。予算に達した場合は受付が終了するため、最新の状況は発表元でご確認ください。
行政書士法人アクティスでは、建設業許可の取得から外国人材の受入れまでをまとめてご相談いただけます。「自社の受入れが技能実習と特定技能のどちらなのかがはっきりしない」「これから外国人材の受入れを考えている」という段階のご相談も歓迎です。お気軽にお問い合わせください。
