「公共工事を受注したい」と考えたとき、避けて通れないのが経営事項審査(経審)です。
建設業許可を持っているだけでは公共工事は受注できません。経審を受け、さらに入札参加資格の審査を受けて、はじめて入札に参加できるようになります。この記事では、その入口である経審の仕組みを整理します。
経営事項審査(経審)とは
経営事項審査とは、公共工事を発注者から直接請け負おうとする建設業者が、必ず受けなければならない審査です(建設業法第27条の23)。
会社の経営規模・経営状況・技術力・社会性などを数値化し、客観的な点数として評価します。発注者はこの点数をもとに建設業者をランク分けし、工事の規模に応じて入札に参加できる業者を決めています。
つまり経審の点数は、どのくらいの規模の公共工事に参加できるかを左右する成績表です。
経審が必要になるのはどんなときか
- 公共工事を元請として直接受注したい場合に必要です
- 下請として公共工事に関わるだけなら、経審は不要です
対象となる工事は、建設業法施行令第45条で次のように定められています。
- 発注者が国・地方公共団体・公共法人等であること
- 工事1件の請負代金が500万円以上(建築一式工事は1,500万円以上)であること
- 災害時の応急工事など、一定の工事は除かれます
なお、この500万円・1,500万円という金額は、許可が不要な軽微な建設工事の基準と同額ですが、別の条文で定められた別の基準です。混同しないよう注意してください。
経審の全体像——2つの審査で構成される
経審は、次の2つの審査を組み合わせたものです。
| 審査 | 内容 | 受ける場所 |
|---|---|---|
| 経営状況分析(Y点) | 決算書をもとに財務内容を分析 | 国土交通大臣の登録を受けた登録経営状況分析機関(民間) |
| 経営規模等評価(X・Z・W点) | 完成工事高・技術者数・社会性などを評価 | 許可を受けた行政庁(知事許可なら都道府県) |
この2つの結果を合算して算出されるのが、総合評定値(P点)です。入札参加資格でよく使われるのがこのP点です。
総合評定値(P点)の内訳
P点は、5つの評点を次の割合で組み合わせて算出されます。
| 記号 | 評価項目 | ウエイト |
|---|---|---|
| X1 | 完成工事高 | 0.25 |
| X2 | 自己資本額・平均利益額 | 0.15 |
| Y | 経営状況(財務内容) | 0.20 |
| Z | 技術職員数・元請完成工事高 | 0.25 |
| W | その他の審査項目(社会性等) | 0.15 |
つまり P=0.25X1+0.15X2+0.20Y+0.25Z+0.15W という構成です。
注目すべきは、Z(技術職員数・元請完成工事高)とX1(完成工事高)で合わせて50%を占める点です。点数を上げたい場合、技術者の確保・育成がもっとも効きやすい項目になります。
W点(社会性等)には、建設業退職金共済制度への加入、防災協定の締結、法令遵守の状況、建設機械の保有状況、ISO等の認証取得、担い手の育成・確保の取組などが含まれます。日常の経営努力が点数に反映される項目です。
令和8年7月1日から経審の審査項目が変わりました
直近の改正で、W点の中身が見直されています。これから受審する方は次の点にご注意ください。
- 社会保険(雇用保険・健康保険・厚生年金保険)の加入状況が、審査項目から削除されました。ただし社会保険への加入は建設業許可の要件であることに変わりはないため、引き続き加入が必要です
- 建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度への宣言が、新たに加点対象になりました
- 加点対象となる建設機械が9機種から11機種に拡大(不整地運搬車、アスファルト・フィニッシャが追加)
- 建設キャリアアップシステム(CCUS)の就業履歴蓄積措置の配点が引き下げられました
令和8年7月1日以降に申請する経審から適用されています。古い情報のまま準備を進めると、想定した点数と食い違うおそれがあります。
経審を受けるまでの流れ
ステップ1:決算変更届を提出する
経審の前提として、決算変更届(事業年度終了届)の提出が必要です。 福岡県は、経審の申請書を送るまでに決算終了後の変更届を済ませるよう案内しています。
また福岡県では、経審を受けるために事前の「予約申込み」が必須です。この申込みをしていないと経審を受けられないため、県の案内を必ず確認してください(申込みは電子申請サービスで行い、手数料のオンライン納付にも対応しています)。
しかも、はじめて経審を受ける場合は2期分(3年平均を選ぶ場合は3期分)の決算変更届が必要です。未提出分がたまっている会社は、まずここから着手することになります。詳しくは決算変更届の記事をご覧ください。
ステップ2:経営状況分析を申請する
登録経営状況分析機関に決算書等を提出し、経営状況分析結果通知書(Y点)を取得します。民間機関なので、機関によって手数料が異なります。おおむね1〜2週間で結果が出ます。
ステップ3:経営規模等評価を申請する
Y点の通知書を添えて、許可行政庁に経営規模等評価を申請します。ここで完成工事高・技術職員数・社会性等が審査されます。
このとき、総合評定値(P点)の請求もあわせて行うのが通常です。P点の通知を受けるには請求が必要で、請求しないとP点は算出されません。
ステップ4:結果通知書を受け取る
経営規模等評価結果通知書兼総合評定値通知書が交付されます。これが入札参加資格申請に使う成績表です。
有効期間は「審査基準日から1年7ヶ月」
経審でもっとも重要な期限管理がこれです。
結果通知書の有効期間は、審査基準日(=決算日)から1年7ヶ月です。公共工事を継続して受注するには、この期間が切れないよう毎年経審を受け続ける必要があります。
決算日から7ヶ月以内に次の経審の結果通知を受けられれば、空白期間が生じない計算です。決算 → 決算変更届(4ヶ月以内)→ 経営状況分析 → 経営規模等評価、という流れを毎年繰り返すことになります。
1日でも空白があると、その間は公共工事を直接受注できません。 決算変更届の遅れが経審の遅れに直結するため、スケジュール管理が欠かせません。
経審の後に必要な「入札参加資格申請」
経審を受けただけでは、まだ入札には参加できません。発注機関ごとに入札参加資格の申請が必要です。
国・県・市町村はそれぞれ別に受付を行っており、申請時期も定期受付・随時受付と機関によって異なります。この点は入札参加資格申請の記事で解説します。
まとめ:毎年のサイクルとして管理する
経審は一度受けて終わりではなく、決算 → 決算変更届 → 経審 → 入札参加資格という毎年のサイクルです。どこか1つが遅れると、公共工事を受注できない期間が生まれます。
行政書士法人アクティスでは、経営規模等評価の申請代行を88,000円〜、経営状況分析の代行を55,000円〜で承っています(このほかに行政庁へ納める審査手数料と、分析機関の手数料が別途必要です)。決算変更届とあわせたご依頼や、「未提出分がたまっていて経審を受けられるか不安」というご相談も歓迎です。お気軽にお問い合わせください。
